片麻痺が「歩く」ということ

闘病記


私は一年前、脳出血を起こし、


左片麻痺の障害を負った。

文字通り左半分が麻痺。左上肢、左下肢を
思うように動かす事ができなくなった。

つまり歩くことが出来ない。
 
手術をして私の命
救って頂いた主治医から
こう告げられたことを
今でも鮮明に覚えている。

一生車椅子を覚悟してください。あなたはそれだけ重い麻痺を負いました。しかし諦めないでください。
歩けるようにリハビリ
頑張ってください。」
 
私はまだこの時は、リハビリとは何なのか
まだ分かっていなかった。
 
リハビリとは無縁の人生を歩んできたし、
リハビリなんて、
じいさんばあさんがするものだと、
ずっと思っていた。
ただ、単純に、リハビリと呼ばれるものを
病院で施して貰ううちに麻痺が治っていき、
そのうちいつか歩けるようにしてくれるのが
リハビリなんだと思った。

日本の医療技術はやはり素晴らしいと
安心した。
 

 

そして、入院開始初期より
リハビリが始まり、リハビリは
毎日かかさず
行われた。
リハビリをしてくれるのは、想像していた
年輩のお医者さんや整体師さんではなく、
自分よりもずっと歳下の
若いお兄さんやお姉さんたち。

そんな生まれて初めてのリハビリが、
急性期と呼ばれる最初の入院時から、
回復期のリハビリ病院入院期間の
計半年間、毎日みっちり行われた。

麻痺が治ること、

そして、
また歩けるようになること
信じて。
 

 

しかし、最初の期待を裏腹に、
 
私の左手足の麻痺は
治ることはなかった。


 

 

肩や股関節は多少は動くようにはなったが、
今でも手足の指は
自由に動かせないし
力も入らない。

麻痺は、手足の付け根から
遠くなればなるほど、
脳からの神経がきちんと
末端まで届きにくくなるそうだ。
だから手足も
指を動かすのが
一番難しい。

麻痺の具合は結局、
一年前とそんに変わってないものの、
今は歩けるようになった。

ほんの数ヶ月前まで
車椅子がないとトイレすらいけなかったのに。
今では電車を乗り継ぎ、県外のラーメン屋まで一人で行けるようになった。

別に麻痺は良くなったわけではない。
 
これがリハビリの力なのだ。
 
麻痺が治ったわけではないのに、
歩ける。
 
これは一体
どういうことか。

 
べつに特殊な器具を装着してるわけでもない。
 
自分自身が実際片麻痺の障害を負い、
リハビリを頑張って
きたからこそ、
実際体験したからこそ

 
理解できた、
 
片麻痺が

歩く」と
いうこと。


歩く」とは、
二本脚で立ち、そして交互に動かして
進むこと。
歩行なぞ、普段無意識にしてる動作であり、
物心がつく前から、誰もができる。
 
ところが片麻痺と呼ばれる障害を負うと、
無意識が
無意識では
なくなる。

そもそも歩けなくなるし、
立つことすらできない。
なぜなぜなら片足が動かないから。
誰かに腰を持ち上げてもらわないと、
トイレの便器にすら座れない。
 
今椅子に座っている人や、
床に座っている方は、
倒れないように注意して、
片足だけを動かして
立ってみてほしい。

 

 

できましたか。

これが片麻痺です。
足腰の強い方や運動神経の良い方なら
立つことは簡単にできたと思います。
 
無事に立つこができた方は、
そこから片足のみを動かして
歩いてみてください。
 
別に片脚一本でケンケンして
前に進むというわけではなく、
もう片方の脚は
全く動かさないだけで結構です。
 
前に歩けましたか?
 

片麻痺の「歩く」とは、
自転車に乗るのとよく似てるとい思います。

最初は誰も自転車に乗ることはできません。

みな幼少期に必死に練習して

自転車に乗れるようになったかと思います。
 
自転車乗れるようになった最初の頃は、
転倒しないよいに神経を研ぎ澄まし、
集中して、乗っていましたよね。

しかし、今ではスマホをいじりながらも
自転車を運転する人もいるかと思います。
ながら運転は危険ですが、昔あれだけ
苦労した自転車の運転が、
スマホいじりながらもできるように
なっているわけです。

これは歩行とて
同じこと。

 
麻痺になる前は、スマホ見ながらでも、
無意識にできていた歩行が、
今回の脳卒中により、無意識どころか
歩くことさえもできなくなったわけです。
 
自転車の乗り方を
忘れてしまったようなものです。

つまり、歩行のリハビリとは、
運転できなくなった自転車に
もう一度乗れるように、
自転車の練習をもう一度行い、
運転技術を再取得するようなもの。

ただし今回の自転車の練習は
最初の練習と少し状況が違います。
今回練習する自転車は前輪がありません。

チェーンもゆるゆるだし、
ハンドルもぐらぐらです。
おまけにサビだらけでペダルも重いです。
ボロボロの自転車です。
 
そうです。これが麻痺です。
 

 

しかし!
ボロボロな自転車でも、
練習をすれば乗れるように
なるかもしれません。
 
前輪がなければ
ウイリー走行すればよいのです。
どんなにボロボロの自転車(重い麻痺)
であっても練習(リハビリ)さえすれば
絶対前に進めるようになります。

リハビリの先生とは自転車の乗り方を
いちから丁寧に教えてくれるひと。
 

幼少期の頃の父のように、二人三脚で
一緒に頑張ってくれる。


しかも乗り方の方法だけではなけく、
叱咤激励
もくれる。
 
もし自転車の錆が酷くて
漕ぎにくかったら関節をマッサージして、
体が動きやすく、(自転車の錆取り)も
してくれる。
 
私が回復期病院で
リハビリ概念の基本にしていたのが
ボバースアプローチと呼ばれる
リハビリのアプローチ方法。
 
リハビリの流れは
患者一人一人に合わせた、
評価と治療
評価とは、
実際にボロボロの自転車を触ったり
動かしたりしでみて、
どこが具合悪いか
徹底的に調べて見つけること。
調子悪いところが分かれば、
リハビリの先生独自の技で
治療をしていく。
この治療方法はボバースコンセプトとは違う。

ボバースアプローチとは、
自転車に乗れやすくするために、
自転車のどこを直せばよいか
徹底的に調べること。
 
もしサドルがグラグラなら
しっかりボルトを締める。
 

私は最初は左膝に全く力を
いれることができず、
安定に立つことが困難だった。
しかし、ボバースアプローチによる
評価と治療により、
私の膝に強靭な力が戻った。
 

治療方法については色々な方法があり、
どれが一番優れているなどは
ここでは語らない。
 
共通することは同じ。
いかに上手に自転車に乗れるように
教えてくれるか。
そして、乗りやすい自転車に
メンテナンスしてくれるか、
である。
 
私は回復期リハビリテーション病棟での
リハビリの先生達のおかげで、
コマつきだけど、半年という
わずかな練習期間で、
自転車に乗れる(歩行)
できるようになった。
 
今ではコマも取れ、(杖なし)
無意識で運転できるようにもなった。

たくさんの苦労もあったが、
今こうして杖なしで
歩けるようになったのも、
これまで出会ってきた先生達のおかげだ。

リハビリとはなんて
素晴らしいんだろう。

 
そしてリハビリに携わる、
セラピスト
と呼ばれる
プロフェッショナルな若者達が
たくさを存在していることを
今回の経験を通じて
知ることができてよかった。
 

 
「え?

将来やりたい仕事が

分からない。
だって??」

 

 

だったら
 

 
理学療法士

作業療法士

を目指せ!
 

 

他人の笑顔で
食う飯

旨いと思うぞ!

 
 


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