最初に面会に来てくれたのは【闘病記⑮】

急性期


最初の面会人は、

妻でもなく実家の父母でもなく、

実はだった。

しかし現実の世界の
話かどうかはよくわからない。

入院中、これが現実世界なのか夢の世界なのか
よくわからないことがたびたびあった。

入院初期
術後のせいか
とにかくずっと頭が痛かった。

頭痛薬も筋肉注射も全然効かない。
 
 
頭は腫れ、
こめかみと手術したあたりがズキズキ痛い。

ずっとこんなもんだから
脳がずっと眠りの浅いところにいる感じ。

寝不足もあいまってずっとふわふわしている。

人間は浅い睡の時に夢を見るんだそうで、
頭痛のせいでずっと浅い睡眠しかできない。

夢と現実の間でうなされていた。
 

 

病室の机あたりに
ずっとスマホがある様な気がして

消灯後、暗い病院で
仕切りに大声で

「Hey Siri!」

と叫んでスマホを
探そうとして、

ナースさんに
「他の患者さんに
迷惑なので
静かにして下さい」

と注意された
こともあった。

 
 
で、
「Hey Siri!」と呼んだあと、

なんだかSiriが
反応した音が聞こえた気がして、

頑張って消灯台に手を伸ばして
探したこともあった。
ベッドに仰向けの状態で。
 

 

そうである。病院に搬送され、
もう助かっているのに

心はいまだ事務所で、
未だにスマホを
探しているのである。

スマホを探す夢はたびたび見た。
 

 

夢というか現実過ぎてリアルなのである。

実際周りの迷惑かえりみず
深夜に「Hey Siri!」と大声で
何回も叫んでしまって
ナースさんから怒られることが
しばらく続いた。
 

 

あと、ここにあるはずのない、
普段愛用していたリュックが
病室のどこかに置きっ放しに
なっているような気がして

ナースさんに今すぐリュックを
持ってきてと何度も
ワガママを言ったり。
 

 

リュックをナースさんに
要求することも、

そして怒られることも、

実は全てセットで
全部リアルな夢の
可能性もあるが。
 

 

それぐらい頭痛が酷くて
頭が混乱していた。

そんな頭痛が寝ている間も
ずっと続くある日、

ナースさんから
「弟さんが面会に来られましたよ」と
呼ばれる。
 

 

私には4つ違いの
弟がいる。

私のためにわざわざ
田舎から出てきてくれたのか、

しかも彼の奥さんも
一緒だと言う。

わざわざ夫妻でお見舞いに
来てくれたことが嬉しかった。
 

 

しかし今、
弟の奥さんの姿は見えない。

なにやら、
彼の奥さんが誰かナースさんと
ソックリという話で、

ナースさん達と
詰め所で盛り上がり、
なかなかこっちに来ないのだという。
 

 

という話を弟にしたら、
まったく身に覚えにないという。

現実ではなかったのだ。

 それでも私は、


面会に来てくれた
嬉しさだけは
今も鮮明に
残っている。

 
 


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