週に2回だけ
早朝出没する、
「ホリー!」
と叫びながら徘徊するおじさんの謎が
16年越しに解決した話
今日も朝早く、5時前頃に目が覚めた。
最近どんどん起きるのが
早くなっていっているような気がする。
今日も変わらずおいおいジジイがうるさい。
おいおいジジイとは、最近
「おい!おい!」
と、どこぞの病室で
怒鳴って怒ってるジジイのことである。
いつも廊下中に響きわたっている。
隣の病棟のため、どんな奴かは謎だ。
まさか男性ナースでないとは思うが。
とにかく声が不愉快でうるさい。
他のジジイが
「うるせーぞ!」と怒鳴って喧嘩が始まると
最悪のパターンである。
私がいるのは脳神経の病棟。
脳の疾患は何も運動機能だけではない。
人によっては
感情のコントロールがうまくできず
怒りやすくなっている患者もおられる。
とはいっても大変やかましい。
これがニワトリなら風情があって
いいものなのだが。
朝っぱらから
ジジイの怒鳴り声なんぞ聞きとうない。
いったい怒鳴りジジイは
どこの誰やねんと思っていたら、
ふと、とあるエピソードを思い出した。
むかしむかしあるところに、
私がまだピチピチの10代後半の頃。
とある大阪の地で独り暮らししておったそうな。
独り暮らしも慣れ始めたある日の早朝、
とても奇妙な
オッサンの声が外から聞こえるようにった。
毎日ではない、
週に何回かだけ聞こえる。
どこかのオッサンが
「ホリー !」「ホリー!」
※正しくは「ほりぃぃぃーーーーぃ
い」と、「い」の語尾がすげー長い。後半はやや強めの「い」
と大声で叫んで外を徘徊しているのだ。
いつもその声が聞こえてくるのは、
朝もやがかかる
早朝で、
だいたいまだ寝ている頃。
実際何て言って叫んでいるのか知りたくて、
気にはなっていたが、
わざわざ起きて着換えて外に出て
ホリーおじさんを探すのもめんどくさい。
何度か外にオッサンを探しに
見に行ったことがあるが、
見つけることができず、
結局未解決のまま
引越ししてしまった。
いったい何を叫び回っているのか
分からないままで、
ホリーおじさんの正体が気になりすぎて
探偵ナイトスクープに依頼の応募をしたほどだ。
結局採用はされなかったが。
万が一アカン人なら御蔵入りに
なりかねないから仕方ない。
そしていつのまにか
ホリーおじさんの声が聞こえなくなり、
存在自体をすっかり忘れ、
月日は16年ぐらい経った。
結婚して今の家に住み始めるまで
何度か引越しはしたが
当時独り暮らしし始めた場所から約16年間、
いうほど住所は変わっていない。
そしてとある日の早朝、
私は長男を幼稚園へ送りに、
一緒に歩いていた時だった。
横断歩道をわたろうと、
ふと向こう側に目をやると、
見窄らしい格好をしたオッサンが
こちらに向かってくるのに気がついた。
私はとっさに長男をかばうように
横断歩道を渡り始める。
そしてそのオッサンが私と長男すれ違いざまに
「幼稚園送り迎え大変ね」と
激励してくれた。
長男はキョトンとしていたが、
近所の方に声をかけてくれたことに、
そして褒められたことに大変嬉しくなり、
私は「ありがとうございます!」と
オジサンに会釈を返した。
勝手に不審者扱いしてしまって
申し訳ないなあと思ったその時、
そのおじさんが、
「ごみー!」
と、叫びながら何かを探すように
歩き始めたではないか。
コイツや!
そうである。
大阪で独り暮らし始めたとき、
時々早朝に聞こえていた
ホリーおじさんが
その人だったのだ。
しかも「ホリー!」と叫んでいたのではなく
「ごみー !」だった!
あれだけ当時
必至に正体を探していたオッサンが目の前にいる!
しかも「ゴミー!」と叫びながら
道端の、
他人が捨てたゴミ袋を勝手に回収して回る
迷惑オヤジだった!
そういえば声が聞こえるのは週2回の
ゴミの日らへんだったような
気がする。
ちなみに出没場所は、大阪市の
JR塚本駅半径3km
淀川区西淀川区周辺である。
もしかしたら心当たりがある方も
おられるかもしれない。
約16年ごしにあの時の謎が判明するとは
夢にも思わなかった。
という話をふと思い出し、
誰かに話したくて仕方なくなった。
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