いつだっただろうか。
田舎出身の私が、ミナミの帝王に憧れて、
大都会大阪に単身住み始めて割と慣れ始め、
電車を色々使って
遠出し始めた頃の話である。
阪急電車に乗ろうと、
阪急梅田駅の茶屋町方面の改札口の
券売機付近で、
電車賃が記載された看板を
じっと見上げていた時、
ふいに
肩をポンポンと叩かれた。
人を呼ぶときに軽く叩くやつだ。
びっくりして振り向くと、
顔はホームレス風の小汚い感じで、
身なりはスーツをバシッと着こなした
オッサンが、
こっちを見てニヤニヤしていた。
面識は全然ない。
当時大阪駅周辺には
ホームレスが風景と化すぐらい
いたので、
その類かと思った。
スーツを着たホームレスぐらいおるやろう、と。
関わったらあかん奴やと思って、
スルーして券売機に向かおうと思ったその時、
「ちょっとごめんやで。」と、
私を通せんぼするように
オッサンが通行の邪魔をしてきた。
「めんどくさそうな奴に絡まれたなぁ。」
と私がオロオロとキョドッていたら、
オッサンが
「ちょっとお前、うちの事務所に来い」
と言うではないか。
オッサンの口元が見えた。
歯がボロボロだった。
私は怖くなり無理に行こうとすると、
それに合わせるように
ずいっと通せんぼしてくる。
うんこにたかる小蝿のように、
通せんぼしながら着いてくる。
超ウゼエ(-_-;)
私は勇気を振り絞って、半泣きで
「エ?ナンデショウ?」
と訪ねてみた。
声が震え&小声すぎて
相手にちゃんと伝わったか
凄く心配になった。
オッサンは
「とりあえず今すぐ事務所来い」
と言う。
なにやら私に
かなり御用があるようだ。
「チョット イソイデマスノデスミマセン」
とオッサンを撒こうとした
その時だった。
オッサンが腕を掴んできた。
私はちょっとパニックになった。
わけが分からない。
通行人は
皆フル無視である。
私があまりにも存じませぬ態度を
貫いているので、
あれ?っと思ったオッサンが聞いてきた。
「お前、組長のせがれ
刺したやろ?」と。
なにやら私が、
どこぞのヤクザの組長の息子さんを刺して
逃げ回っている奴に特徴が似ていて、
ただの人違いだったようだ。
刺したのも
ついさっきのことだったようで
仲間と必死で探しまわってるとのこと。
さすが大阪。
Vシネマの様な突然の出来事に、
3か月ぐらい
茶屋町側の阪急梅田駅改札付近に
近づくのが怖かった。
17年ぐらい経った今でもちょっと怖い。
もしあの時、
オッサンに無理矢理
連れて行かれてたらどう
なっていただろう?と
時々思ふ。
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