近くて遠いトイレ【闘病記⑧】

急性期


踏ん張れば踏ん張るほど、

チン先から
オシッコが滲み出る。

どうしようもない。
 

 

我慢が
出来ない。

 

 

だんだんパンツが湿り始めて来た。

股間がしょんべんくさい。

アルコールを摂取すると
オシッコが急激に近くなるのが困る。
 
 
そしていよいよ我慢の限界になってきた。

こんなところで盛大に漏らしたら大変だ。

代表は県外に出張中で、

今、事務所には私ただ一人。
 
 
助けてくれる人はいない。

 
 
私は、なんとか自分で立てれないか頑張った。

何か杖の代わりになりそうなものはないか
探そうとしたが、

いい感じの杖があったとして
今立てそうな気がしなかった。

それぐらい
足にまったく
力がはいらない。

なので、

立つことは諦めて、

尿瓶の変わりになりそうなものを探す事にした。

とりあえず身動きがまったく取れないので、

なんとか手の届く範囲でいいものはないか探す。

しかし日も暮れて、事務所は真っ暗け、

周りは民家だらけ、

しかもここは3階なので、
通り掛かりの車のライトなどの光は
全く期待できない 。
 
手探りだけでさがす。

飲みかけのチューハイの缶では
入り口が小さすぎる。

しかもチンが怪我しかねない。

とここで、昼に食べた吉野家の
持ち帰り弁当のビニール袋を発見。

もうこれしか無いと思った。

中にあった紅ショウガと
七味の袋を取り出し、
遠くに投げ棄てる。

下半身をあらわにして、
チンを袋に射し込む。

これで準備万端。

しかし漏れそうなのにオシッコが出ない。

袋にきちんと排尿できる自信がなかったのか,

脳がここはトイレじゃないよ。
とストッパーをかけているのか、

まったく出てこない。

とりあえず今即席トイレは諦めて

早くトイレに行かねば。

誰かに助けてもらわないと
一人でトイレに行くのは無理そうだ。

一人で解決する事は諦めて、

助けを呼ぼうと思った。
 
 
しかし会社が借りている私の作業場の事務所は、

古アパートの一室。

周りの住人は一人暮らしの御年寄ばかり。

わりとすれ違うので
周りにどんな人が住んでいるのか
だいたい把握している。

右隣はときどき電話の話し声が聞こえるが

けたたましいい
ハングル。

下手すりゃ隣は日本人じゃない
可能性が高い。

これはもう
自分で救急車を呼んだ方が早いと思った。

しかしこんな時に限ってポケットに
スマホが入っていない。

携帯ポケッター派なのに。

スマホは暗い
この事務所のどこかに落ちている、、、。

私の作業場は
本当にマンションの一室という感じで、

PC用の平机にモニターとPCをおいて
座布団に座って普段仕事をしている。

 
 
今日は確か事務所に着いて、

PCの電源を入れて
ポケットに入っているスマホを、

床にいつも置いてあるティッシュ箱あたりに
一緒に置いたような気がする。

この時ほど黒いスマホケースにした事を
後悔した事はない。


完全に闇に乗じてやがる。

PCのモニターの
わずかな明かりでは全く役に立たない。

電気も立たたないとスイッチに
手が届かない。

 
 
そのときどこかでスマホのバイヴ音が

「ヴー」と鳴っているのが聞こえた。

バイヴ音が途切れず鳴ってる。

という事はこれは電話だ‼︎

バイヴ音が途切れてまたなり始める。

現在時刻は恐らく夜遅く。

なかなか帰って来ない私の身を案じて、
妻が鬼電してるのだろう。

この時ほど妻に「ナイス!」
思ったことはなかった。

この何処かで聞こえる、
バイヴ音だけが最期の頼みの綱だ。

お願いだから電話をかけ続けてとお願いした。

こういうときほど落ち着いて探してられない。

とにかく両手で音が聞こえる方に、
仰向けで両手をジタバタ。
※この時はまだ左手も動いていた記憶がある。

 
 
しかしいっこうに見つからないまま
ついにバイヴ音が途絶える。

でも少なくともこのあたりにあるのは
確かなんだ。

 
 


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